吸収性材料と注意点 1. コラーゲン| コラーゲン、ヒアルロン酸、ボトックス注入療法なら東京千代田区の神田美容外科形成外科医院

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吸収性材料と注意点 1. コラーゲン

著者:征矢野 進一
公開日: 2006年12月25日 日本美容外科学会会報 第28巻 第4号別刷

はじめに

注入用コラーゲン製剤は、米国で臨床性病変の修復に用いる原料を開発する目的で研究され、臨床への応用はKnappらにより1977年に報告された。
しかし、現在は注入用コラーゲンが皺に対する有効率が極めて高いことが判明したため、世界各国で主に皺の治療などに用いられている。吸収性材料のフィラーとしては最近では他にヒアルロン酸やポリ乳酸なども使用されているが、最も長い期間臨床使用されているコラーゲン製剤に関して今回報告する。

使用材料

著者は1985年9月よりZyDERM®(以下ザイダーム)(Fig. 1)を、1988年5月よりコーケンアテロコラーゲンインプラント(以下アテロコラーゲン)(Fig. 2)を使用してきた。

日本での臨床応用に関しては、注入用コラーゲンとして、まず株式会社高研のアテロコラーゲンが1986年9月29日に厚生省(現在は厚生労働省)より認可を受け、続いて米国コラーゲン社(現在はInamed社、米国)のザイダームが1987年11月6日に、また架橋コラーゲンのZYPLAST®(以下ザイプラスト)が1991年1月11日に認可を受けた。最近ではヒト由来コラーゲン製剤のCosmoderm®(以下コスモダーム)やCosmoplast®(以下コスモプラスト)(Inamed社、米国)(Fig. 3)が2003年4月から、またブタコラーゲン由来のEvolence™とEvolence Breeze™(ColBar Lifescience, Israel)(Fig. 4)を2005年から販売が開始された。

ヒト由来コラーゲン製剤は米国FDAの認可は受けている。また、ブタ由来コラーゲン製剤が現在ヨーロッパにてCEマークを取得済で、米国においては来年FDAの認可の予定だそうである。これらの製品はまだ日本では認可されていない。著者はこれらの未認可製剤に関しても、考えられる危険性と安全性を患者に十分説明のうえ、治療に用いた臨床経験をしている。

  • ZyDERM®(ザイダーム)
  • 高研アテロコラーゲン・インプラント。左から3%、2%、1%。
  • Fig. 1 注入用コラーゲン製剤。上から順に、Zyderm® Ⅰ、Zyderm® Ⅱ、Zyplast®、およびテスト用シリンジ。(Inamed社・アメリカ)
  • Fig. 2 高研アテロコラーゲン・インプラント。左から3%、2%、1%。(高研株式会社・日本)
  • 左からEvolence、Evolence Breeze。(ColBar Life Science社・イスラエル))
  • Fig. 3 コスモダーム® I、コスモダーム® II、およびコスモプラスト®。(Inamed社・アメリカ)
  • Fig. 4 左からEvolence、Evolence Breeze。(ColBar Life Science社・イスラエル)

方法

顔面の皺や陥凹の治療にコラーゲン製剤を用いた。治療前にそれぞれの製剤を前腕に皮内テストを行い、4週間の経過観察後に皮内テストが陰性(Fig. 5)のものに治療を行った。

治療した症例は額、眉間、下眼瞼、目尻、鼻唇溝、頬、口唇、口角、下顎などの皺や陥凹であった。1〜3週間後に再度診察を行い治療結果の評価を行った。その際、陥凹や皴の改善に患者が十分に満足できなかった場合には、同一の注入剤かまたは別の種類の注入剤の追加注入を行った。

50歳、女性

  • Fig. 5 50歳女性。Zyderm® Ⅰおよび高研アテロコラーゲン・インプラントの皮内テストで陽性反応を示した。

結果

1985年からウシ由来コラーゲン製剤などを用いて治療した症例は約7,000症例であった。 この内訳は、半年から1年程度で再度注入治療を希望して来院する場合が多いのでそれらを別治療(1〜3週間後に行う追加修正は数えない)と数えた。

また1人の患者が数ヵ所の皮膚の厚さが違う部位の治療を希望することがあった。この場合は、各種コラーゲン製剤の濃度やメーカーの違いがあったが、それは今回は別症例とは数えていない。したがって部位別および注入材料別に数えると、7,000症例の数倍の治療数となる。

注入治療を行った患者の多くはその結果に満足して、再度来院する例が多かったが、なかには予期せぬ副作用・合併症を起こした例もあった。副作用・合併症の内容として、内出血、疼痛、発赤、ビーズ反応(高濃度の注入剤を用いた場合よく起こる皮膚の凸凹)、遅延型アレルギー、壊死などであった。実際に治療した症例のうち、眉間、額、鼻唇溝、下眼瞼陥凹の部位を治療したものを以下に提示する。それらの症例は期待通りに治療できたものと、治療の合併症副作用が出現したものである。

症例1:60歳女性。副作用なし

額と眉間に深い皺があった。これを治療希望として来院した。額と眉間にザイダームⅡを注入した。
2週間後には皺は浅くなった。この症例のように通常は額や眉間の皺などは患者が満足するような経過をとることが多かったが、次の症例2〜4に関しては副作用が目立った。

  • 額および眉間のしわ。治療前。Zyderm® IIを注入した
  • a)額および眉間のしわ。治療前。Zyderm® Ⅱを注入した。
  • b)治療2週間後。しわは目立たなくなっている。

症例2 43歳女性。副作用(紫外線による発赤)あり。

額の皺の治療を希望した。額にアテロコラーゲン2%を注入した。数日後に晴天の日にゴルフを行った。プレーの間は日焼け止めクリームなどは使用しなかった。その更に数日後より発赤、腫脹が認められた。2週間後には額に数本の発赤を伴う帯状の筋が認められた。翌年の同様の治療後には紫外線を遮断して外出したので、上記の反応はみられなかった。

  • 額のしわ。高研アテロコラーゲン・インプラントを注入した
  • 治療後。日光過敏による発赤と腫脹が認められる
  • a)額のしわ。高研アテロコラーゲン・インプラントを注入した。
  • b)治療後。日光過敏による発赤と腫脹が認められる。

症例3 33歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。

眉間の皺の治療に来院。1回目の治療にて眉間と鼻唇溝にサイダームⅡを注入した。2週間後の診察にて皺は浅くなった。2か月後から2か月に1回のペースで鼻唇溝のみ発赤と腫脹を繰り返すようになった。この腫れの状態は初回注入から1年近く継続した。

  • Zyderm® II 注入後の遅延型アレルギー反応。
  • Zyderm® Ⅱ 注入後の遅延型アレルギー反応。

症例4 53歳男性。副作用(小壊死)あり。

眉間と額に多くの皺があり治療を希望した。ザイプラストを注入した数カ月おきに注入を繰り返すうちに内出血が目立ちはじめ、ところどころ小壊死も認められるようになった。

  • 53歳男性。Zyplast® 注入後、額に皮下出血と壊死がみられた。

症例5 38歳女性。副作用なし。

下眼瞼の陥凹の治療を希望した。アテロコラーゲン2%を注入した。2週後には陥凹が目立たなくなった。下眼瞼は皮膚が薄いので、治療には慎重にならざるをえない部位である。
上記の症例のように陥凹が改善するケースが多かったが、まれに下記のように遅延型アレルギーを起こすこともあった。

  • 38歳女性。下眼瞼の陥凹。高研アテロコラーゲン・インプラントで治療を行った
  • 療2週間後。良好な結果が得られた。
  • a)38歳女性。下眼瞼の陥凹。高研アテロコラーゲン・インプラントで治療を行った。
  • b)治療2週間後。良好な結果が得られた。

症例6 42歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。

皮内テストを実施したが、ザイダームとアテロコラーゲンは4週間は反応がなかった。それ以降にザイダームのテスト部位に少し発赤があり、アテロコラーゲンは反応がなかった。発赤を心配して更にテスト観察期間を延長したが、2か月程度ザイダームのテスト部位が、発赤と腫脹を数日間持続する反応を数回繰り返した。

反応が陰性であったアテロコラーゲンを下眼瞼陥凹に注入した。その2週間後の診察では、下眼瞼陥凹は改善したが、更に1か月してから注入部位が、3日〜1週間数回程度の発赤腫脹を起こした。下眼瞼陥凹に注入してから6か月で発赤腫脹は軽減した。

  • 症例6 下眼瞼の陥凹に高研アテロコラーゲン・インプラントを注入後、遅延型アレルギー反応を認めた。

症例7 50歳女性。副作用なし。

鼻唇溝の皺にザイダームⅡを注入した。2週間後は改善していた。

  • a)50歳女性。鼻唇溝のしわにZyderm® Ⅱを注入した。
  • b)治療2週間後。良好な結果が得られた。

症例8 33歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。

初回治療は鼻唇溝のみにザイダームⅡを注入した。経過良好で、効果も3年程度持続した。2回目の治療は眉間と鼻唇溝の皺をザイダームⅡで行った。2週間後の診察では皺は改善していたが、それからさらに2カ月して、眉間と鼻唇溝に発赤と腫脹が再出現した。

  • 症例8 33歳女性。鼻唇溝にZyderm® IIを注入後、遅延型アレルギー反応を認めた。
  • 症例8 33歳女性。鼻唇溝にZyderm® Ⅱを注入後、遅延型アレルギー反応を認めた。

症例9 52歳女性。

ザイダームとコスモダームを皮内テストしたが、数日以内にザイダームのテスト部位のみ発赤と腫脹が出現した。その後もザイダームの反応は半年程度持続したが、コスモダームのテスト部位は陰性であった。

  • 症例9 52歳女性。皮内テスト2週間後。Zyderm® Ⅰに陽性反応を示したが、Cosmoderm® ͖には陰性であった。

症例10 48歳女性

他院にて、コスモダームを用いて目尻の皺を治療した。数日後より注入部位に発赤と腫脹が現れた。確認のため生理食塩水、キシロカイン、アテロコラーゲン、コスモダーム、ザイダームをそれぞれ皮内テストした。4日後の診察ではコスモダームのみが発赤と腫脹が出現していた。なお、キシロカインの注入部位は内出血のため少し色素沈着が認められた。

  • 症例10 48歳女性。生理食塩水、キシロカイン、高研アテロコラーゲン・インプラント、Cosmoderm®、Zyderm®の皮内テスト4日後。Cosmoderm®のみが陽性反応を示した。

考察

ウシコラーゲン製剤はすでに30年以上にわたり臨床応用されている。その間に様々な副作用や合併症が報告されている。針を使う治療なので、疼痛や内出血などは他の針を使う治療と同様に起こりうるが、それ以外に、遅延型感作反応や壊死などが重大な問題点として知られてきた。

今回は皮内テストを実施して、4週間後の診察でも異常がなかった場合でも、その後発赤や腫脹などが起こりうることや、眉間領域で特に壊死などを起こした症例を供覧した。

このような副作用をできるだけ起こさないためには、2回の皮内テストを行い、十分な観察期間をおくことが重要であると思われた。
また架橋コラーゲン製剤を用いる場合は、注入後の皮膚の変化をよく観察して、異常が認められたらそれ以上の注入を一旦中止する必要がある。

またヒト由来コラーゲン製剤であってもアレルギー反応を起こしうることがあった。
主成分が安全であっても、製造工程で混入する微量の成分に対しては完全に除去できることはないので、注入治療に使用する材料がアレルギー反応を示すかどうか、慎重に皮内テストを行う必要があると思われる。

まとめ

コラーゲン製剤は皮膚の成分とほぼ同様の構造を持ち、注入後も自然な結果を得るので、著者は他のいろいろな注入剤が開発された現在でも使用を続けている。いままで経験した症例により、十分な皮内テストと経過観察、また慎重な注入手技が必要と思っている。

文献

  1. Knapp TP., Kaplan EN., Daniels JR.: Injectable collagen for soft tissue augmentation. Plast Reconstr Surg, 60: 398, 1977.
  2. 征矢野進一、菅原康志:ヒアルロン酸を用いた皺の治療経験. 日美外報, 22: 1-7, 2000.
  3. 征矢野進一:注入用ポリ乳酸(ニュー フィル)の使用経験. 日美外報, 24: 15-19, 2002.
  4. 征矢野進一、福田修:ZCI(コラーゲン注入剤)による皮膚陥凹の治療経験. 日美外報, 8: 147, 1986.
  5. 征矢野進一:注入剤による眼瞼陥凹除皺術. 形成外科, 46: 175-181, 2003.
  6. 征矢野進一:ヒトコラーゲン(Cosmoderm® I・Cosmoplast®)の使用経験. 日美外報, 26: 29-33, 2004.
  7. 征矢野進一:コラーゲン注入において注意すべきいくつかの問題点. 形成外科, 35: 1487, 1992.
  8. Elson ML.: The role of skin testing in the use of collagen injectable materials. Dermatol Surg Oncol, 15: 301-303, 1989.

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