吸収性材料と注意点 1. コラーゲン
形成外科医の征矢野進一(2006)は、「吸収性材料と注意点 1. コラーゲン」において、注入用コラーゲン製剤が皮膚のしわや陥凹の修正を目的として長年使用されてきた吸収性材料であると報告している。
使用材料
1985年からZyderm®、1988年から高研アテロコラーゲン・インプラントを使用しており、日本では1986年にアテロコラーゲン、1987年にZyderm®、1991年に架橋型のZyplast®が順に厚生省の認可を受けたと述べている。さらに、2003年にはヒト由来コラーゲン製剤Cosmoderm®・Cosmoplast®が、2005年にはブタ由来コラーゲン製剤Evolence™・Evolence Breeze™が海外で販売開始されたが、これらは当時日本では未認可であった。
方法
顔面のしわや陥凹の治療にコラーゲン製剤を使用し、治療前に前腕で皮内テストを実施、4週間観察して陰性の場合に注入を行った。治療部位は額・眉間・下眼瞼・目尻・鼻唇溝・頬・口唇・口角・下顎などで、1〜3週間後に再診し効果を評価し、満足度が低い場合は同種または別製剤を追加注入した。
結果
1985年以降、ウシ由来コラーゲン製剤を中心に約7,000例の治療を実施した。半年〜1年後に再注入を希望する例が多く、1〜3週間以内の微調整は別治療として数えなかった。複数部位を同時に治療する場合も、製剤や濃度の違いによる区分は設けていないため、実際の治療回数は7,000例を大きく上回る。多くの患者が結果に満足したが、一部では内出血、疼痛、発赤、ビーズ反応、遅延型アレルギー、壊死などの副作用がみられた。特に眉間、額、鼻唇溝、下眼瞼の症例でその傾向が確認された。
症例1:60歳女性。副作用なし
- a)額および眉間のしわ。治療前。Zyderm® Ⅱを注入した。
- b)治療2週間後。しわは目立たなくなっている。
症例2 43歳女性。副作用(紫外線による発赤)あり。
- a)額のしわ。高研アテロコラーゲン・インプラントを注入した。
- b)治療後。日光過敏による発赤と腫脹が認められる。
症例3 33歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。
- Zyderm® Ⅱ 注入後の遅延型アレルギー反応。
症例4 53歳男性。副作用(小壊死)あり。
- 53歳男性。Zyplast® 注入後、額に皮下出血と壊死がみられた。
症例5 38歳女性。副作用なし。
- a)38歳女性。下眼瞼の陥凹。高研アテロコラーゲン・インプラントで治療を行った。
- b)治療2週間後。良好な結果が得られた。
症例6 42歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。
- 症例6 下眼瞼の陥凹に高研アテロコラーゲン・インプラントを注入後、遅延型アレルギー反応を認めた。
症例7 50歳女性。副作用なし。
- a)50歳女性。鼻唇溝のしわにZyderm® Ⅱを注入した。
- b)治療2週間後。良好な結果が得られた。
症例8 33歳女性。副作用(遅延アレルギー)あり。
- 症例8 33歳女性。鼻唇溝にZyderm® Ⅱを注入後、遅延型アレルギー反応を認めた。
考察
ウシコラーゲン製剤は30年以上使用されており、有効性が高い一方で、遅延型感作反応や壊死などの副作用も報告されている。皮内テストで異常がなくても、後に発赤や腫脹を生じる場合があり、眉間では壊死の症例がある。副作用を防ぐには2回の皮内テストと十分な観察期間が必要で、異常時は注入を中止すべきである。また、ヒト由来コラーゲンでも不純物によるアレルギーの可能性があるため、慎重な皮内テストが求められる。
総じて、コラーゲンは皮膚組成に近く自然な仕上がりを得やすい有用な注入材であるが、十分な皮内テストと経過観察、慎重な施術が不可欠であると結論づけている。
出典:征矢野進一(2006)「吸収性材料と注意点 1. コラーゲン」『日本美容外科学会雑誌(日美外報)』第28巻第4号、pp.167–173.





























