注入療法について(コラーゲン、ヒアルロン酸など)
注入療法は、しわや陥凹といった皮膚の形態変化に対して、皮膚成分に近い物質を補填することで改善を図る治療法として用いられてきました。代表的な注入材にはコラーゲンとヒアルロン酸があり、それぞれ性質や適応部位に違いがあります。
コラーゲンは皮膚に多く含まれるタンパク質で、額や眉間、鼻唇溝などのしわや陥凹に用いられてきました。ウシ由来製剤では免疫反応のリスクを考慮し、事前の皮内テストと一定期間の経過観察が必要とされています。一方、ヒト由来コラーゲンではそのような反応は報告されておらず、比較的使用しやすい特徴があります。注入後の効果は時間とともに生体内で分解され、半年から1年程度持続するケースが多いとされています。
ヒアルロン酸は皮膚にも存在する成分ですが、コラーゲンとは異なりタンパク質ではないため、原則として皮内テストを必要としません。ただし、製造過程由来と考えられる微量成分の影響により、まれに発赤や腫脹が生じることがあります。また、皮膚の薄い部位では注入後に凹凸や硬さが目立つ場合があるため、皮膚の厚みや部位特性を考慮した使用が望ましいとされています。
これらの注入材はいずれも、しわや陥凹の改善に一定の有用性が確認されている一方で、素材ごとの特性を理解し、適切な部位選択や事前説明を行うことが治療結果の安定につながると考えられています。
左右の鼻唇溝の皺/Zyderm II® を鼻唇溝に注入した。2週間後には鼻唇溝の皺は浅くなっていた
本稿は、征矢野進一による「注入療法について(コラーゲン、ヒアルロン酸など)」および関連する臨床報告をもとに、内容を整理・再構成したものである。2005年 日本皮膚科学会雑誌 第115巻 別冊



















