スレッドリフト(吸収糸)の治療経験
吸収性素材を用いたトゲ付き糸によるスレッドリフトは、皮膚を切開せずに顔面のたるみ改善を図る治療法として報告されている。使用される糸は、乳酸とカプロラクトンの重合体からなる吸収性材料で、糸の中央部に向かって一定間隔でトゲ構造を有し、皮下組織を物理的に引き上げる仕組みを持つ。
治療は局所麻酔下で行われ、耳介側から頬、口唇、顎方向にかけて皮下に針を通し、糸を留置する方法が採用されている。術後は圧迫や被覆を必要とせず、数日で外観は安定し、皮下に生じる糸の膨らみや違和感も数か月以内に軽減するとされている。
報告では、40〜50歳代の男女を対象に実施され、鼻唇溝や口角のしわ、頬のたるみを主な治療対象としていた。従来のフェイスリフト手術と比較して、治療時間や社会復帰までの期間が短い点が特徴とされ、特に長期のダウンタイムを確保できない患者に適した方法と考えられている。
合併症としては、糸の突出や触知時の違和感などが一部に認められたが、処置により修正可能であり、重篤な問題は少なかったとされている。吸収性素材を用いることで、非吸収性糸で報告されている合併症のリスクは時間の経過とともに低下する可能性が示唆されている。
本治療は余剰皮膚を切除する方法ではないため、すべてのたるみに適応できるわけではないものの、条件を選べば有用な選択肢となり得る治療法として位置づけられている。
58歳の女性/鼻唇溝から口角のたるみが若干改善している
本稿は、征矢野進一による「スレッドリフト(吸収糸)の治療経験」および関連する臨床報告をもとに、内容を整理・再構成したものである。2008年 日本美容外科学会会報 第30巻 第2号 別冊



















