コラーゲン・ヒアルロン酸・ポリ乳酸の注入物の問題と展望
しわや陥凹の改善を目的とした注入療法では、これまでにコラーゲン、ヒアルロン酸、ポリ乳酸といった異なる性質をもつ注入材が使用されてきた。それぞれの材料には特徴があり、効果の出方や注意点も異なる。
コラーゲン製剤は皮膚構成成分に近い性質を持つため、顔面の多くの部位で自然な改善が得られやすいとされている。一方で、ウシ由来製剤では事前の皮内テストが必要となり、判定までに一定期間を要する点が制約となる。また、まれではあるが、皮内テストが陰性であっても遅発性の反応が生じる例が報告されている。効果の持続期間は永続的ではないものの、体内で吸収されるため、結果に不満が残った場合でも影響が長期化しにくいという側面がある。
ヒアルロン酸製剤は、もともと体内に存在する物質であり、原則として皮内テストを必要としない点が利点とされている。比較的分子量の大きい製剤を用いることで効果の持続が期待できるが、皮膚の薄い部位では凹凸や硬さ、色調差が目立つ場合がある。また、製剤中に含まれる微量成分の影響と考えられる発赤や腫脹が、まれに生じることも指摘されている。
ポリ乳酸製剤は、生体内で徐々に分解される吸収性素材で、軽度の炎症反応を介してコラーゲン生成を促す作用があるとされている。皮内テストを必要とせず使用できる一方、効果の発現が緩やかで、複数回の注入が必要となる場合がある。また、頸部など皮膚の薄い部位では、注入後に凹凸が残りやすい傾向がみられた。
コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリ乳酸による注入治療では、コラーゲンは多くの部位で良好な結果が得られたが皮内テストが必要であった。ヒアルロン酸とポリ乳酸はテスト不要だが、薄い皮膚では凹凸が生じやすく、ヒアルロン酸では発赤・腫脹、ポリ乳酸では効果発現の遅さがみられた。
注入療法の安全性と満足度を高めるためには、各材料の性質を十分に理解したうえで適切に使い分け、治療前の説明と術後の経過観察を丁寧に行うことが不可欠であると考えられている。
40歳の女性/目尻から下瞼にかけての皺があり、ザイダームとアテロコラーゲンを注入した
本稿は、第85回日本美容外科学会学術集会(2002年)で発表された論文「コラーゲン・ヒアルロン酸・ポリ乳酸の注入物の問題と展望」(征矢野進一 著)の内容を元に構成しています 。



















