単純性血管腫に対するアルゴンレーザー治療の統計的観察
はじめに
アルゴンレーザーは、血管腫治療への有用性が期待されつつも、症例ごとに効果の差が大きいことが課題とされてきました。本研究では、治療適応をより明確にすることを目的に、同一施設における多数の症例を対象として、照射前の皮膚の状態や各種因子が治療結果にどう関連するかを統計的手法により分析・検証しました。
研究方法
昭和55年から昭和61年10月まで、195例(221ヵ所)の血管腫等に対しアルゴンレーザー照射を行いました。本照射に先立ち試験照射を実施したほか、108例については組織検査を行い、血管の状態に基づいた組織学的分類を行いました。効果判定は照射後6ヵ月以降に実施しています。
結果
効果判定
判定可能だった178例のうち、周囲の皮膚と遜色ないほど改善した「優」は11例、良好な結果を得た「良」は46例であり、これらを合わせた有効率は32%でした。
性差・年齢と効果
性別による効果の差はなく、年齢層(10歳ごとのグループ分け等)による有意な差も認められませんでした。
部位と効果
部位別では「頸部」が最も有効率が高く、一方で「四肢・手」は体幹や顔面に比べて有意に結果が芳しくないことが示されました。
出力と効果
出力の高さと治療結果の良否に直接的な相関は見られませんでした。
組織型と効果
皮膚の浅い層に拡張した血管がある「superficial dilated type」が良好な結果を示す傾向にありましたが、統計的な有意差までには至りませんでした。
圧迫消退の有無
照射前の圧迫による赤みの消退しやすさは組織型(constricted type)と関連がありましたが、治療効果の予後判定指標とはなりませんでした。
考察
部位による効果の差については、頸部は表皮が薄く、手足は厚いという解剖学的な違いがレーザーの到達度に影響していると考えられます。また、組織型や外観からの予後判定には限界があり、血管の状態だけでなくメラニン色素や表皮の厚さ、照射後の瘢痕の生じやすさなど、複数の因子が関与していることが推察されます。
まとめ
血管腫195例(221ヵ所)へのアルゴンレーザー治療を行い、照射前の諸因子から予後を判定する方法を統計的に考察しました。血管腫の予後予測において、現時点では「どの部位にあるか」という情報が最も重要です。性別、年齢、圧迫消退の有無については、統計的な分析において照射結果との有意な差は見出されませんでした。
症例2:46歳、女
顔面血管腫。左上眼瞼から口唇にかけて血管腫がある。赤みは比較的濃いが、暗赤色ではない。外鼻、上口唇に軽度の肥厚を認める
- 照射前。顔面左側血管腫。テスト照射は3ヵ所に行ない効果を認めた。
- 照射後1年。判定は良。軽度の赤みが残るが、巨視的な瘢痕はなく、薄い化粧で隠せるようになったと満足している。
本稿は、征矢野進一「単純性血管腫に対するアルゴンレーザー治療の統計的観察」形成外科 31巻(第11号) 1988.を元に構成しています 。



















